留学を決めたらすぐに取っておこう!ドイツの大学出願に必要になる学歴証明書

出願準備

ドイツの大学に行きたい、と言ってももちろんすぐ行けるわけではありません。

そもそもドイツで高校に通っていた人たちは、大学に出願するためにAbitur(アビトゥーア)という試験を受け、一定以上の点数を取って、行きたい大学に出願する資格があるという証明をする必要があります。

アビトゥーアと同等になるのはセンター試験と大学入学共通テスト

日本のように、高校を卒業すればどこかしら出願できる大学があるというわけではないのです。これはこのブログで扱っている国立大学に限らず、私立大学でも要求されています。

簡単に言うと、ドイツのアビトゥーアは、2019年度までのセンター試験、2020年度からの大学入学共通テストと大体同じぐらいのポジションです。なので、高校を出てすぐにドイツの大学に行きたい!という方はこれらのどちらかを受けているか、または受ける予定があるのかも頭に入れておいてください。

後述しますが、そうしないと1年日本の大学に通ってからやっとドイツの大学に出願できるようになるので、タイムロスになります。

それでは、各学歴によってどういう証明書が必要なのか解説していきましょう。これらの情報は、自分の学歴をドイツの教育システムと比較できるサイト、anabinを参照しています。

anabin: Anabin - Informationssystem zur Anerkennung ausländischer Bildungsabschlüsse

そして、2023年度冬セメスターから、日本からドイツの大学入学を目指すための過程が細分化されるので、DAADのサイトも参考にしています。

大学入学条件
BachelorやStaatsexamenなどドイツの大学の最初の学位課程へ入学申請するには、一般的に、基本条件として大学入学申請資格(Hochschulzugangsberechtigung (HZB) やHochschulreifeなど...

大前提:証明書は英語かドイツ語!

各証明書は英語、もしくはドイツ語で発行されている必要があります!もし日本語版しか出せないと言われてしまった場合、公的にドイツ語に翻訳してくれるところがあるので、それに当たる方はページ下部に載せる方法で翻訳してもらいましょう。

1.高校卒業したて

  • 高校の卒業証明書、成績証明書

高校の学生課に行って、自宅に届けてもらいましょう。応募しようと思っている大学の数+2部ぐらいが安心です。anabinによると、国語、数学、外国語、理科(どれか)を1年から3年までで履修して単位を無事に取得していることが証明される必要があります。

ちなみに元の文章はこんな感じです。

“In der Fächer- und Notenübersicht des Sekundarschulabschlusszeugnisses muss eine durchgängige Belegung der Fächer Muttersprache, Fremdsprache, Mathematik und Naturwissenschaften in den Jahrgangsstufen 10-12 mit Bestehensnoten nachgewiesen sein.”
出典: anabin (国選択で日本を選択してください。)

…えっ、理科???そうです。文系高校生のみなさんには本当に残念なお知らせです。

ちなみに文科省の高校各科目必修要項に、理科に関してはこんな風に書かれています。

1999年度~2008年度末まで

”履修については、「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」、「物理1」、「化学1」、「生物1」及び「地学1」のうちから2科目(「理科基礎」、「理科総合A」及び「理科総合B」のうちから1科目以上を含むものとする)が必履修である。”

参照: 文部科学省 高等学校学習指導要領(平成11年3月告示、14年5月、15年4月、15年12月一部改正) 第1章 総則 第1款 教育課程編成の一般方針

2009年度以降(現行)

”理科のうち「科学と人間生活」,「物理基礎」,「化学基礎」,「生物基礎」及び「地学基礎」のうちから2科目(うち1科目は「科学と人間生活」とする。)又は「物理基礎」,「化学基礎」,「生物基礎」及び「地学基礎」のうちから3科目

参照: 文部科学省 高等学校学習指導要領 平成20,21年改訂版 第1章 総 則 第3款 各教科・科目の履修等 および 高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)第1章 総 則 第2款 教育課程の編成 (2)各教科・科目の履修等

ということは、理科に関しては、日本では最低でもどれか2科目履修していれば卒業できる計算になりますね。文理選択などで、高2以降理科を履修していないという方もいらっしゃるかと思われます。このパターンだと、高校卒業直後にドイツの大学に即出願は不可能です。

ドイツ学術交流機関、DAAD(Deutscher Akademischer Austauschdienst)でもこのことについて触れられており、高校3年間通して、各学年で理科から1科目履修していない高校生は、卒業後すぐにドイツの大学に出願できない、と明記しています。(参照: DAAD-Ausbildungsanalyse Japan 2017, Hochschulzugang in Deutschland 2017年6月発行 )

ここで理系が優遇されるとは…。

ちなみに化学、生物、物理、地学はドイツで言う理科に分類されているので、とりあえず高校の3年間でどれか入れ代わり立ち代わりでもやってきたなら安心して大丈夫でしょう。

  • センター試験、もしくは大学入学共通テストの成績表(2023年春セメスターまでに入学の場合)

応募しようと思っている学部で必要な科目の62%の成績を証明する必要があります。どの科目が必要なのかは、入試課(Immatrikulationsamt)、に聞いてみた方がいいでしょう。

成績表は、試験受験後の成績通知で取得可能です。しかし試験出願時点で成績通知を希望している必要があり、再発行ができません。ずっと前に試験を受けたけど、成績表は今手元にない、という方はこちらを今から揃えるのは難しいかもしれません。

成績通知は日本語での発行になります。英語、もしくはドイツ語訳が必要になるので、後述の方法で公的書類として翻訳してもらいましょう。

2023年冬セメスター以降入学の場合

2020年度からセンター試験に代わり、大学入学共通テストが実施されています。開催時期は今のところセンター試験と同じ、1月中旬になっています。(参照: 独立行政法人 大学入試センター)

高校を卒業して、大学入学共通テストを受験、その結果をもってドイツの大学に入りたいという方は、以下の条件を満たせば、志望学部に限り出願ができます。

5教科で420点以上取る

そのうち出願する学部で必要な2科目で62%以上*取る

*どの科目を受験しておく必要があるのかは、あらかじめ出願予定大学の入試課(Immatrikulationsamt)に問い合わせておきましょう。

また、大学出願に必要な2科目はこちらのリンクにある、”subject (advanced level)“でなければいけません。

国語と外国語は受けておこう

受験科目の組み合わせに制限はありませんが、教科の配点を見たところ、国語と外国語のみ200点満点なので、自ずとこれらは必須になってくるでしょう。この2教科と他3教科なら、700点満点になり、一番目の条件である全体で420点というのは60%になります。

100点満点の教科5つ受けて、420点を目指すよりもだいぶ楽になるし、特に外国語を外して受験するのは、留学を目指すうえであまりお勧めできるやり方ではないので、楽するためにもここは避けずに頑張りましょう。

2. 高専卒業したて

高専を卒業したら、準学士という学位が認められます。

ので、高専の卒業証明書と成績証明書はもらっておき、必要であれば公的な翻訳(後述)を依頼しましょう。

ただし、これだけではドイツの大学では入学資格に足るとは認められず、準学士になったうえで

2-1.高専卒業後、その専攻を学びたいとき

ドイツの大学入学前に未履修科目を学ぶ補習校(Studienkolleg)への入学が許可されます。ここに通い、最終試験(Feststellungsprüfung)に合格すると、自身が高専で学んできた学部への出願が許可されます。

もしくは

2-2.高専卒業後、4年制の大学に入りなおしたとき

高専卒業後、さらに日本の4年制大学に入学して、1年次以上を修了することで、そこで学んでいる専攻と同等のドイツの大学の学科に応募することができます。しかし以下の点に注意してください。

高専での専攻と日本の大学での専攻が違うが、高専での専攻をドイツの大学で学びたいときは2-1.の過程を辿ることになります。

また、そもそも今まで自身が学んできたこととは全くの別分野に出願する場合も同様です。

3.大学生以上対象

ここからは現在大学生の皆さん、もしくは大学を卒業した皆さんがドイツの大学に出願するときに、大学から集めておく書類の紹介です。

大学のランクに注目!

自分が通っている大学が、ドイツで同じように大学に相当する教育機関だと認められているとは限りません。

基本的に全日4年制以上であれば国公私立関係なくドイツでも大学として認められます。anabinのサイトで自分が通う大学がドイツから見てどの位置にいるのか探してみましょう。

Institutionen: Anabin - Informationssystem zur Anerkennung ausländischer Bildungsabschlüsse

下の画像のように、黄色で塗りつぶされているところ(国、所在地、教育機関のタイプ)を打ち込み「Suche starten」をクリックすれば、自分の大学が出てきます。

anabin 
Das Infoportal zu ausländischen 
Bildungsabschlüssen 
Hochschulabschlüsse 
Institutionen 
Schulabschlüsse mit Hochschulzugang 
Anerkennungs- und Beratungsstellen in 
Deutschland 
Info 
Suchen 
Suchen nach Institutionen 
Länderauswahl (Land ausgewählt) 
Alle Orte 
Alle Institutionstypen 
Bitte geben Sie einen Suchbegriff ein 
Bitte geben Sie einen Suchbegriff ein 
e 
Weiteres Suchfeld hinzufügen 
Die Ergebnisse werden unten angezeigt. 
KULTUSMINISTER 
KONFERENZ 
Zentralstelle 
für ausländisches 
Bildungswesen 
Ihre Auswahl: 
• Japan 
FhE-±L 
Suche starten 
Suche zurücksetzen
(出典: anabin)

こちらは検索結果の一例です。左から5番目の”Status”という欄を見て、H+となっていれば、その教育機関はドイツでも大学として認められます。H-の場合は大学とはみなされません。

Institution 
Advanced Institute of 
Industrial Technology 
Aichi Bunkyo Daigaku 
Aichi Bunkyo Joshi Tanki 
Daigaku 
Aichi Bunkyo university 
Aichi Bunkyo Women's 
College 
Aichi Bunkyou Daigaku 
Ort 
Onna / Kunigami 
Tokyo-to, Shinagawa-ku 
Komaki-shi, Aichi-ken 
Inazawa-shi, Aichi-ken 
Komaki-shi, Aichi-ken 
Inazawa-shi, Aichi-ken 
Komaki-shi, Aichi-ken 
Institutionstyp 
Staatliche 
Liniversität 
(kokuritsu 
(köritsu) 
daigaku) 
Private 
Liniversität 
(shiritsu 
daigaku) 
Tanki Daigaku 
(privat) 
Private 
Liniversität 
(shiritsu 
daigaku) 
Tanki Daigaku 
(privat) 
Private 
Liniversität 
(shiritsu 
daigaku) 
Status 
Land 
Japan 
Japan 
Japan 
Japan 
Japan 
Japan 
Japan 
Gehört zur Institution 
Syuto Da igaku_IQkyg 
Aichi Bunkyo Daigaku 
Aichi Bunkyo Daigaku
(出典: anabin)

3-1.日本の大学入学中(全日4年制大学以上、1年次終了)

  • 高校の卒業証明書
  • 大学の在学証明書
  • 1年で35単位以上取得した成績証明書(Academic Transcript of Records)

以上3点で、現在ご自身が通う専攻学部限定で、ドイツの大学に出願可能になります。ただ、高校の成績証明書は一応持っておいた方がいいでしょう。

3-2.短期大学卒業(全日制)

  • 高校の卒業証明書
  • 大学の卒業証明書、成績証明書(Academic Transcript of Records)

以上3点で、現在ご自身が卒業した専攻学部限定で、ドイツの大学に出願可能になります。このケースでも、念のため高校の成績証明書も持っておきましょう。

また、これまでに紹介した学歴で、卒業した専攻とは違う学部に出願したい方は、ドイツの大学入学前に未履修科目を学ぶ補習校(Studienkolleg)への入学が許可されます。ここに通い、最終試験(Feststellungsprüfung)に合格すると、志望学部への出願が許可されます。

短期大学は日本では大学ですが、anabinによるとH-となっており、ドイツでは大学扱いされません。そして、ドイツの大学に出願する場合は最低でもその大学を卒業している必要があります。3-1.のように、1年通っただけというパターンでは出願はできません。

3-3.大学卒業(全日4年制大学以上)

  • 大学の卒業証明書

原則この1点で、ドイツの全学部に出願可能になりますが、念のため高校の卒業証明書、成績証明書、大学の成績証明書(Academic Transcript of Records)も手元に持っておいた方がいいと思います。

公的書類の翻訳、公証

各出願書類は、公的書類であることが求められています。でも、高校や大学の中には、英語での証明書を発行していないところがあり、このままだと提出できないという方もいるかと思われます。

そんな時は、在日ドイツ大使館、もしくはドイツ総領事館が紹介する公認翻訳士に依頼しましょう。2020年6月現在、公認翻訳士として日本に7名が登録されています。

認証翻訳
日本語の書類をドイツの役所、裁判所その他の公的機関へ提出するには、ドイツ語への翻訳が必要です。アポスティーユが必要な場合は、翻訳前に取得してください。書類に翻訳を添付した後ではアポスティーユの取得はできませんのでご注意ください。

基本的には、事前連絡で内容を問い合わせ、必要な言語の組み合わせ(ドイツ語or英語)と必要なコピーの部数を伝えておきます。その後は依頼料を支払い、切手を貼った返信用封筒と書類の原本を送付するという流れです。

必要コピー部数は、後々紹介するuni-assistを通しての応募なら1枚です。uni-assistではなく、大学に直接送るなどの場合はもっと必要になることも考えられます。各書類なるべく必要な分+1部依頼して、紛失や破損に備えておきましょう。

翻訳士によって対応が異なる

翻訳された公的書類は、その翻訳文の内容がオリジナルと完全に一致するものであると証明してもらう必要があります。これは各翻訳士に依頼するときに「翻訳を公証してもらうことができるか(amtlich beglaubigt)」も同時に聞いておきましょう。

ドイツでも政府から公認されている翻訳士の方たちは、公証の権限も有しているのでそれが可能です。ドイツから翻訳士としての認可を得ていない方に翻訳を依頼する場合は、翻訳された書類が帰ってきた後に、ドイツ大使館、もしくは総領事館に公証をもらいに行く必要があります。

ここで注意点。翻訳書類の公証は、翻訳済みの書類(全ページ)に、公認翻訳士、ドイツ大使館、もしくは総領事館が押せる公証印と署名がオリジナルの状態で載っていることが条件となります。

下の画像を見てみてください。上段では、翻訳文をコピーした後に公証印と署名が権限を持った人が押して、書いたそのままで載っています。この翻訳済み書類は画像内の「beglaubigte Kopie」という状態にあり、各機関に元々の書類と内容が一致していて、公的な書類であることが認められます。

一方下段では公証印と署名が入った翻訳済みの書類をさらにコピーして該当機関に提出しようとしています。これでは公証印と署名もコピーされた状態になってしまい、受け取り側は翻訳前と後の内容が一致しているのかを審査できません。

(出典: uni-assist)

話を少し戻します。この「beglaubigte Kopie」の状態で翻訳された書類をキープしておく必要があるため、公認翻訳士に翻訳書類の公証が可能かを聞いておく必要があるのです。できないと答えられたら、他をあたるか、翻訳までとりあえずしてもらって、公証をドイツ大使館、もしくは総領事館にご自身で申請しに行きましょう。

翻訳までにどれだけかかるのかは依頼内容次第ですが、僕が試しにセンター試験の成績を翻訳してもらったときは、書類を送ってから2週間ほどかかりました。

ドイツ国内なら日独翻訳士100人以上

ちなみにドイツ国内なら、こちらのサイトによると2020年6月現在100名以上の公認通訳士が登録されています。ただ、専門分野があるかもしれないこと、公証に対応しているかは完全に掲載されてはいません。連絡先にご自身で問い合わせる必要があります。

自分に当てはまるのは1パターンだけ

今回はパターンが多いから、ボリュームもその分増えてしまいましたが、ご自身に当てはまるところだけを探せば実はそんなに面倒なものではありません。だからひかないで(懇願)。

ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます!

別のブログも読んでいただけたらうれしいです。

んでは、また~。

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